バフェットが日本の5大商社株を買い増す理由――その投資哲学と日本市場への確信
ウォーレン・バフェット氏率いるバークシャー・ハサウェイが、日本の5大商社(三菱商事、三井物産、住友商事、伊藤忠商事、丸紅)の株式を大量保有し、さらに買い増しを続けている――この動きは世界中の投資家から注目を集めています。なぜバフェット氏は、今、日本の商社株にこれほど強い関心を寄せているのでしょうか?その背景には、単なる割安感だけでは語りきれない、複数の戦略的な理由が存在します。
バークシャーと商社――“多角化”という共通点
日本の総合商社は、資源開発から消費財、物流、金融、情報、事業投資まで、幅広い分野に事業を展開する“コングロマリット”です。この多角的なビジネスモデルは、エネルギーや保険、鉄道、食品など多様な事業を傘下に持つバークシャー・ハサウェイの構造と驚くほど似ています。バフェット氏はこの“親近感”を公言しており、商社を単なる投資先ではなく、将来的な事業パートナーとしても捉えている節があります。両者ともに、短期的な利益よりも長期的な企業価値の向上を重視する姿勢も共通しています。
割安感と株主還元――財務的な魅力
バフェット氏が商社株に注目した大きな理由の一つが、その“割安さ”です。2019年後半から2020年にかけて投資を開始した当時、日本の商社株は米国株と比べて低いPER(株価収益率)で放置されていました。2025年3月時点でも、日経平均の予想PERは約17倍と、S&P500やナスダックと比べて割安感が際立っています。
さらに、近年の日本企業のコーポレートガバナンス改革を背景に、商社各社は増配や自社株買いなど株主還元策を強化。2025年4月末時点での配当+自社株買いの総利回りは、三菱商事7.84%、三井物産7.25%、丸紅4.75%、住友商事4.58%、伊藤忠商事4.32%と、非常に魅力的な水準です。安定したキャッシュフローと強固な財務基盤も、バフェット氏が高く評価するポイントです。
円建て資金調達と為替戦略――巧みな財務運用
バフェット氏の投資戦略の巧妙さは、資金調達方法にも表れています。バークシャーは低金利の日本円で債券を発行し、その資金で商社株を購入。これにより、米ドル調達よりも低コストで資金を確保できるだけでなく、円安が進行すれば為替差益も享受できます。実際、2024年末時点でバークシャーは円安による税引き後8億5000万ドルの利益を得ています。この“円建てバランス戦略”は、為替リスクを抑えつつ、高い配当利回りとの差(スプレッド)を利益として取り込む、バフェット流の巧みな財務運用です。
長期保有と経営陣への信頼
バフェット氏は「今後50年は売却を考えない」と明言するほど、商社株を“超長期”で保有する意向を示しています。これは、長期的な企業価値の成長を重視するバフェット氏の投資哲学と、商社の安定したビジネスモデルが見事に合致している証拠です。後継者のグレッグ・アベル氏も各社経営陣と頻繁に面会し、その経営手腕や資本配分、株主重視の姿勢、そして米国企業と比べて控えめな役員報酬体系を高く評価しています。
保有比率の引き上げと“バフェット効果”
バークシャーは当初、各社の発行済み株式の10%未満を上限としていましたが、2025年3月には最大9.8%まで保有比率を引き上げています。この買い増しは市場で“バフェット効果”と呼ばれ、商社株の株価上昇を牽引。海外投資家にも日本株の魅力を再認識させ、日本市場への資金流入を促す効果も期待されています。2024年末時点での5社への投資総額(簿価)は138億ドル、市場価値は235億ドルに達し、バークシャーの米国外株式投資としては最大規模となっています。
地政学リスクと分散投資
バフェット氏は地政学的リスクにも目を配っており、台湾よりも日本への投資の方が安心感があると示唆しています。商社のようなグローバル企業への投資は、地理的な分散投資にもつながりますが、同時に貿易摩擦や為替変動などのリスクも伴います。
まとめ――バフェット流“日本株投資”の本質
ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社株を買い増し続ける理由は、単なる割安感や高配当だけではありません。バークシャー・ハサウェイと共鳴する多角的なビジネスモデル、積極的な株主還元、巧みな資金調達戦略、そして経営陣への厚い信頼――これらが複合的に絡み合い、バフェット氏の“超長期投資”を支えています。日本市場と特定企業への強い確信、そして独自の価値基準に基づく投資哲学が、今後もバフェット氏の日本株投資を牽引していくだろう。

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