コンクラーベとは?

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コンクラーベとは?教皇選出の秘密選挙の全貌

カトリック教会の最高指導者・ローマ教皇を選ぶ神秘的な選挙「コンクラーベ」。鍵のかかった部屋で行われる厳格な秘密投票の仕組みと歴史的背景を解説します。

コンクラーヴェが行われるシスティーナ礼拝堂
コンクラーヴェが行われるシスティーナ礼拝堂

コンクラーベとは:定義と語源

コンクラーベ(Conclave)は、ローマ・カトリック教会の最高指導者であるローマ教皇を選出するための選挙、およびその選挙を行う枢機卿団や会場そのものを指す言葉です。日本のカトリック中央協議会では「コンクラーベ」と表記されますが、「コンクラーヴェ」という表記も見られます。

この言葉の語源はラテン語の「cum clavi」(鍵がかかった、鍵と共に)に由来します。これは選挙の秘密保持と外部からの干渉を防ぐため、枢機卿たちを鍵のかかった場所に閉じ込めて選挙を行うという歴史的な慣行を反映しています。

コンクラーベの歴史的背景

コンクラーベという制度が確立されたのは、1268年に教皇クレメンス4世が死去した後のことです。イタリアのヴィテルボで行われた教皇選挙は、枢機卿団の対立により3年近くも空位期間が続きました。業を煮やした市民が枢機卿たちを宮殿に閉じ込め、鍵をかけ、食料を制限して決定を迫ったという出来事が、現在のコンクラーベの原型となりました。

この結果、1271年にグレゴリウス10世が選出され、彼は使徒座空位期間を長引かせないための教皇選挙規則を定めました。現在のコンクラーベの基本形は、1274年の第2リヨン公会議で正式に制定されました。

教皇選挙制度はその後も時代と共に変化してきました:

  • 1059年:ニコラウス2世が教皇選挙権を枢機卿団に限定
  • 1179年:第3ラテラン公会議で3分の2以上の得票が必要と定められる
  • 16世紀:シクストゥス5世が枢機卿団の上限を70名に設定
  • 20世紀:ヨハネ23世が上限を撤廃
  • パウロ6世:選挙権を持つ枢機卿の年齢を80歳未満に制限し、上限を120人に設定
  • 1996年:ヨハネ・パウロ2世が現行の基本規則「ウニベルシ・ドミニチ・グレジス」を発布

選挙の参加者

選挙権を持つ者(選挙人)

コンクラーベで投票権を持つのは、教皇空位(教皇の死去または辞任)発生時点で80歳未満の枢機卿のみです。80歳以上の枢機卿は選挙には参加できませんが、事前の枢機卿会議には参加できる場合があります。

現在の規定では、選挙権を持つ枢機卿(選挙枢機卿)の上限は120人とされていますが、任命のタイミングにより一時的にそれを超えることがあります。2025年4月時点では、252人の枢機卿のうち135人が選挙権を持っています。

教皇に選出される資格

教会法上は、洗礼を受けた男性カトリック信徒であれば誰でも教皇に選出される資格があります。しかし、実際には1378年のウルバヌス6世以降、枢機卿団の中から選ばれるのが慣例となっています。選出された人物が司教でない場合は、就任前に司教叙階を受ける必要があります。

選挙手続きの流れ

段階 内容
開始時期 教皇の死去または辞任による使徒座空位発生後、15日目から20日目の間に開始されるのが原則。ただし、全選挙枢機卿が揃えば前倒し可能。
会場 バチカン市国、バチカン宮殿内のシスティーナ礼拝堂。
開始儀式 選挙当日の朝、サン・ピエトロ大聖堂でミサ。午後、パウロ礼拝堂からシスティーナ礼拝堂へ行列し、宣誓を行う。
投票 無記名の秘密投票。初日午後に1回、2日目以降は午前・午後各2回の計4回行われる。
必要得票数 投票総数の3分の2以上の得票。
膠着時の対応 3日間(計13回)投票しても決まらない場合、最大1日の祈りと考察の期間を置く。その後7回の投票を繰り返す。それでも決まらない場合、同様のプロセスを繰り返し、最終的には直近の投票の上位2名による決選投票となる(候補者自身は投票不可)。
結果の告知 各投票(午前・午後それぞれ2回目)の後、投票用紙をストーブで燃やす。新教皇未決定の場合は薬品を混ぜて黒い煙(Fumata nera)、決定の場合は白い煙(Fumata bianca)を出す。白い煙と共にサン・ピエトロ大聖堂の鐘が鳴らされる。
受諾と教皇名 必要票数を獲得した候補者は、首席枢機卿から受諾の意思を確認される。受諾すればその時点で教皇となる。その後、教皇名を自ら定める。
発表 助祭枢機卿の最年長者がサン・ピエトロ大聖堂のバルコニーからラテン語で「Habemus Papam」(教皇が決まりました)と宣言。新教皇が登場し、最初の祝福「ウルビ・エト・オルビ」を与える。
終了 新教皇が選出され、本人が受諾した時点でコンクラーベは終了する。

厳格な秘密保持

コンクラーベは極めて厳格な秘密保持の下で行われます。枢機卿および関係スタッフは、選挙内容について外部に漏らさないよう宣誓します。違反した場合、枢機卿は破門される可能性もあります。

枢機卿は選挙期間中、バチカン内に新設された宿舎「ドムス・サンクタ・マルタ(サン・マルタ館)」に滞在しますが、外部との接触は厳しく制限され、電話、インターネット、テレビ、新聞なども禁止されます。盗聴防止のため、システィーナ礼拝堂やサン・マルタ館にはジャミング(通信妨害)装置も設置されます。

コンクラーベでの投票の様子
コンクラーベでの投票の様子(イメージ)

ポピュラーカルチャーにおけるコンクラーベ

コンクラーベの秘密性と劇的な性質は、フィクションの題材としても取り上げられています。特に、ロバート・ハリスの小説を原作とした映画『Conclave』(邦題:『教皇選挙』)は、架空のコンクラーベの内幕を描いたミステリー・スリラーであり、アカデミー賞にもノミネートされるなど注目を集めました。

2025年4月の教皇フランシスコ死去に伴い、現実のコンクラーベへの関心が高まると共に、この映画の視聴者数も急増したと報じられています。

コンクラーベの限界と今後の課題

コンクラーベの性質上、その内部で行われる具体的な議論や交渉の内容は、参加者の守秘義務によりほとんど外部に知られることはありません。過去には匿名で情報が漏洩した例もあるとされますが、公式な記録としては残りません。

また、選挙制度自体は時代に合わせて改訂されてきたものの、現代社会における教会の役割や多様性を反映する上で、現行の制度(特に枢機卿のみによる選挙)が最適かについては、今後も議論の対象となる可能性があります。

まとめ

コンクラーベは、単なる選挙手続きを超えた、カトリック教会の伝統と神秘性を象徴する儀式です。何世紀にもわたって洗練されてきたこの制度は、教会の最高指導者を選出するという重大な責任を、秘密性と厳格さをもって遂行するための仕組みとして機能し続けています。白い煙が上がる瞬間は、20億人を超えるカトリック信者だけでなく、世界中の人々の注目を集める歴史的な瞬間なのです。


参考文献

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