日英伊共同開発の次期戦闘機(GCAP)最新動向
日本の次期戦闘機開発は、英国、イタリアとの国際共同開発プログラム「グローバル戦闘航空プログラム(GCAP)」として進行中であり、2035年までの配備開始を目指しています。このプログラムは、航空自衛隊のF-2戦闘機の後継機開発を目的とし、第6世代戦闘機としての高い性能を実現することを目指しています。
開発体制:グローバル戦闘航空プログラム (GCAP)
GCAPは、日本、英国、イタリアの3カ国による国際共同開発プロジェクトとして進められています。F-2戦闘機の退役が見込まれる2035年頃までに後継機を配備することを目的としており、3カ国は技術を結集し、開発コストやリスクを分担することで、将来の航空優勢を確保できる優れた戦闘機の開発を目指しています。
開発を効率的に進めるため、政府レベルではプログラムを管理する国際機関「GIGO(GCAP International Government Organisation)」が設立されました。GIGOの本部は英国に置かれ、初代首席行政官は日本から派遣される予定です。
企業レベルでは、機体の設計・開発・納入を担う共同事業体(JV)の設立が2024年12月に合意されました。このJVの本部も英国に置かれ、日本の日本航空機産業振興(JAIEC)、英国のBAEシステムズ、イタリアのレオナルドがそれぞれ33.3%ずつ均等に出資します。JAIECは、日本のサプライチェーン強化を目的に、日本航空宇宙工業会(SJAC)と三菱重工業の共同出資により2024年7月に設立された新会社です。

機体の概要と開発目標
次期戦闘機は、航空自衛隊が運用するF-2戦闘機の後継機として開発されています。F-2は2035年頃から退役・減勢が始まるため、それに合わせて次期戦闘機の導入が計画されています。
GCAPで開発される機体は、既存の戦闘機を凌駕する性能を持つ第6世代戦闘機と位置づけられています。特にステルス性能の向上が重視されており、日本は得意とする複合材技術などを活かして機体設計(デザイン)に貢献する方向で調整が進んでいます。ネットワーク化された将来の戦闘環境において中核となる役割を果たすことが期待されています。
開発コンセプトは、将来にわたって航空優勢を確保・維持するため、「いずれの国においても実現されていない新たな戦い方を実現」「将来にわたり適時適切な能力向上のための改修が可能」「高い即応性等を確保できる国内基盤を有する」戦闘機を日本主導で開発することです。
具体的なスケジュールとしては、2035年の配備開始を目指しており、試作機の初飛行は2028年頃、生産開始は2030年頃が予定されています。

名称に関する動き
防衛省の内部規則に基づき、次期戦闘機の形式名称はF-2後継機を意味する「F3」として扱われています。自衛隊の航空機は、用途を示す英語の頭文字(戦闘機はF)と開発順を示す数字で命名されるのが通例です。
2025年4月27日付の報道によると、防衛省内で次期戦闘機の愛称として、旧日本海軍が零式艦上戦闘機(ゼロ戦)の後継として計画したものの実戦投入されなかった「烈風(れっぷう)」を使用する方向で検討が進められています。この検討は一部高官の間で秘密裏に進められているとされます。旧軍機名を愛称とすることについて、法的な根拠はなく、省内からは「軍国主義を連想させる」といった批判も出ています。
周辺動向と国際協力
2024年3月、自民・公明両党は、GCAPで共同開発した完成品について、輸出先を限定するなどの条件付きで、日本からパートナー国(英国、イタリア)以外の第三国への輸出を容認することで合意しました。これにより、開発企業間の協議において日本側の発言力が増すことが期待されています。
2025年4月、インド政府がGCAPへの参画意欲を示し、日本政府に打診があったことが報じられました。インドの参画は、開発・生産コストの負担軽減や市場拡大、対中抑止力強化などのメリットが期待される一方、インドとロシアの伝統的な関係を踏まえた技術流出のリスクや、開発遅延、機密情報共有に関する懸念から、日本政府は慎重な姿勢を示しています。
インドに加え、サウジアラビアも資金提供という形でGCAPへの参画に関心を示しているとの報道もありますが、日英伊と対等な形での参画にはならない見通しとされます。
課題と展望
日英伊3カ国での共同開発は、日本にとって米国以外の国との初の戦闘機共同開発となります。各国政府・軍・企業の利害や要求性能、費用負担、作業分担などを調整する必要があり、そのプロセスは複雑さを伴います。特に、経験豊富な英国(BAE)やイタリア(レオナルド)に対し、日本企業がいかに主導権を確保し、対等な立場で開発を進められるかが課題となります。
第6世代戦闘機に求められる高度なステルス性、ネットワーク能力、センサー統合技術などを実現するには、技術的な挑戦が伴います。同時に、この開発を通じて日本の防衛産業基盤全体を強化し、将来にわたる改修能力や即応性を国内で維持していくことが重要な目標とされています。三菱重工が過去に進めた国産ジェット旅客機「スペースジェット」の開発中止を踏まえ、次期戦闘機開発では国内サプライヤーとの連携強化が図られています。
次世代戦闘機の開発には巨額の費用が見込まれます。国際共同開発によるコスト分担が図られるものの、予算の確保と効率的な執行が求められます。また、2035年配備という目標達成に向け、開発スケジュールを遅滞なく進めることが重要となります。
今後の開発フェーズでは、設立されたJVを中心に具体的な設計・開発作業が本格化します。インド等の追加パートナーに関する協議の行方や、複雑な国際調整を乗り越えて計画通りに高性能な戦闘機が実現できるか、引き続き注視が必要です。
出典:
日本経済新聞, 防衛省, 三菱重工業, 産経新聞, ダイヤモンド・オンライン, アビエーションワイヤ, 日本航空機産業振興, NHK, 朝雲新聞, 三菱電機, IHI, 東洋経済オンライン, 沖縄タイムス, Asia Nikkei, France24, AP通信など

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